回答一覧 - 高度医療(体外受精・顕微授精・ギフト他) No.8 -
 鼻炎に悩んでいます。スプレキュアを使用していますが、鼻炎がひどくなってきたので、薬を使いたいと思うのですが、鼻炎の薬とスプレキュアと併用しても大丈夫でしょうか?

 鼻炎のシーズンのとき、スプレキュアをどうするかよく悩みます。鼻炎の薬を使う場合は、スプレキュアを使う前に使用してください。または、鼻炎薬を使用しない場合でも、鼻炎がひどい場合には、鼻をかんでからスプレキュアを使用してください。あまりひどい場合には、一度治療をキャンセルした方がいいかもしれません。
(院長:田中温)
 体外受精後に、体調をくずし、風邪をひいてしまいました。風邪薬を飲むと、受精卵になにか影響はでることはあるでしょうか?

 できるならば、薬を飲まないようにしてください。しかし、どうしても、痛みや発熱がひどい場合は、最少量のお薬を飲まれてもかまいません。体外受精後であれば、胎児に影響がでた場合には、おそらく着床しないということになると思います。胎児に奇形などの症状がでる危ない時期ではありません。
(院長:田中温)
 薬を飲んでも、注射を打っても、なかなか卵ができず、不妊治療がすすみません。どうにかして卵を作る新しい方法はないでしょうか?

 何をしても、卵子ができない場合には、早発閉経(卵巣に反応する卵子がなくなった状態)と考えられます。ほとんどの方が、もともと正常な卵巣機能があって、突然消失する場合が多いようです。ですが、染色体異常(ターナー症候群)のような場合には、初潮がなく無月経のままというような場合もまれにあります。
 最終的には、腹腔鏡下の卵巣生検を行い、組織内の原始卵胞の有無を確認しますが、この検査は、100%の信頼性がありません。というのは、卵巣の表面のごく一部しか採取できませんので、全体像を反映しているわけではないからです。わたしたちは、通常のHMGを投与して反応がない時には、スプレキュアの希釈法を行っております。これは、20倍に希釈したものを、隔日に1日おきに、片側の鼻腔内に投与する方法です。2,3週間で、卵胞が発育してくる方が稀にいらっしゃいます。ですから、試してみる価値はあるかと思います。(この方法は、あまり広くは行われてはいません。)
(院長:田中温)
 体外受精の戻し後(IVF-ET後)に、特におなかまわりに違和感があり、張るような感覚があるのですが、どうしてでしょうか?

 採卵時、多数の卵胞を穿刺したような場合には、ET後に卵巣が肥大して、おなかが張るような感じがありますので、おそらくそれが違和感となっているものと思います。心配はいりませんが、何日間も違和感が残る場合には主治医にご相談ください。知らない間に卵巣が肥大したり、腹水(または血液)がたまっていることもあります。
(院長:田中温)
 クロミッドを飲んでいます。卵胞のサイズを測りに診察に行きますが、自分の状態が気になって仕方ありません。卵胞の成長は、何日目でどれくらいのサイズならば正常というような目安はありますか?

 発育のスピードは、1日約2mmが目安です。
(院長:田中温)
 先周期に体外受精(IVF)をしました。残念ながら、いい結果にならず、生理がきてしまいました。今周期、生理20日目に診察を受けましたが、1週間前と卵胞のサイズがほとんど変わっておらず、卵胞が育っていないといわれました。先周期のIVFでたくさんの薬を使用したので、自力で排卵できなくてなってしまったのではないでしょうか?

 体外受精後、排卵誘発剤をしていますので、正常な月経周期に戻ることができず、排卵がおきずに、卵巣が腫れたままになったのでしょう。この状態が2,3ヶ月続くことがありますが、異常ではありません。必ず、消失してきますので、ご心配はいりません。もし、早く消失させたい場合には、カウフマン療法、またはホルモン剤などを使用すると、早くなくなります。
(院長:田中温)
 普段から、便通が悪くて悩んでいます。体外受精の戻し後(IVF-ET後)は、特に、トイレでおなかに力がいれるのが不安で、便秘がますますひどくなります。卵が流れ出してしまうようなことはないのでしょうか?

 便秘は気にすることはありませんが、健康維持のためには、治しておいたほうがよいですね。排便で、卵が流れ出てしまうことはありませんので心配はいりません。
(院長:田中温)
 インターネット等で見ていると、体外受精(IVF)後の妊娠判定日が、病院によって違うようです。また、検査には、血液検査と尿検査といろいろあるようですが、どちらが正確に判定できるのでしょうか?

 体外受精の判定日は、採卵2週間後で、尿で判定します。血中のHCGは、測る必要はないと思います。血液検査だと、微量のHCGを拾ってしまい、妊娠していない状態にもかかわらず、陽性の判定が行われてしまうこともあります。妊娠判定直後に、出血が始まり、化学的流産という診断となると、その後に不育症の検査にはいらざるを得なくなるということになりかねません。最終的な妊娠判断は、超音波上の胎嚢の有無で決まりますので、妊娠判定検査は、尿中で十分です。
(院長:田中温)
 採卵前、モニターで卵胞のサイズは20mmをきちんと越えていました。なのに、採卵後、卵が未熟卵であったといわれました。サイズは十分だったのに、どうしてでしょうか?

 採取された卵子の質は、すべてが良好ということはまずありえません。大まかな目安としては、3分の2から半分が成熟して、残りは未熟な卵子、または退行卵子だと考えられて結構です。もし、取れた卵子全てが未熟であったり,、退行であった場合には、排卵誘発方法に問題があったのだと思います。その場合には、排卵誘発方法を変えるか、HCG切り替え時期を検討することが必要でしょう。場合によっては、月経周期3日目のE2,FSHの測定は、発育してくる卵子の状態を予測する上で重要であると言われております。
 最近わかってきたことですが、GnRHアゴニストやGnRHアンタゴニストを使用することにより、抑制が強くなりすぎて、LHが低くなり、E2の値が急激に下がってしまうことがあります。ですから、採卵直前(2日前、もしくは1日前)のE2,P,LHの濃度を測定することも次回の戦略を立てる上では重要だと思います。卵は生き物ですから、排卵誘発上の十分な監視が必要です。
(院長:田中温)
 受精卵を戻すときに、アシステッドハッチングをお願いしました。あとで知人に、ハッチングが逆によくない場合もあると聞いて、不安です。大丈夫でしょうか?

 本来、受精卵は卵管の中で分割を繰り返しながら胚盤胞となり、透明帯を自らの力で破って外へ出て行きます。これをハッチング(孵化)といいます。このとき、胚盤胞は拡張して大きくなって、中の圧が高くなり、卵子の外側にある透明帯が薄くなっていき、開口していくといわれています。
 つまり、自然の状態では、分割した胚が胚盤胞となり拡張して、透明帯が薄くなり開口する、ハッチングするというプロセスをたどりますが、アシステッドハッチングの場合は、そのような状態になる前に、透明帯にスリットをいれてしまいます。ですから、本来、着床するまで、卵子を守っている透明帯の役目が、このハッチングをした時点で消失してしまうことになります。培養液中の攻撃因子が簡単に卵子の中にはいってくることもあるでしょうし、胚盤胞になっても十分に拡張する前にハッチングが開始してしまい、途中で完全に脱出できずに終わってしまうこともあります。ですから、現在は、アシステッドハッチングは全ての胚に行うべきではなく、明らかに透明帯が厚く、茶色に変色しているような症例のみに限ったほうがよいと考えます。
(院長:田中温)
 体外受精の戻し後(IVF-ET後)、受精卵が子宮に着床する時期というのは、何日目ぐらいなのでしょうか?

 体外受精後着床の時期は、採卵5〜6日目と言われております。ちょうどこの時期は、胚盤胞になる時期です。しかしながら、人間では、はっきりとこの時期を証明したものはありません。ほとんどが大型哺乳動物を参考にした意見と見解です。卵管内で発育した初期胚は、桑実期で子宮内にはいってきて、胚盤胞で着床するといわれています。
(院長:田中温)
 体外受精(IVF)を何回も繰り返していますが、いい結果がでません。精神的にも経済的にもかなり疲れてきました。少し休みたいのですが、高齢なので、全く治療をしないというのも、焦ってストレスになります。IVFをお休みする間、せめて、薬を使わず、タイミングやAIHをしたいと思うのですが、IVFでさえ妊娠できない私に、意味はあるのでしょうか?

 卵管が正常であるならば、人工授精(AIH)やタイミングはどうぞされてみてください。意外とストレスがなくなって、妊娠することがあります。大切なことは決して諦めないで、チャンスを活用することです。
(院長:田中温)
 お酒が大好きで、やめられません。なるべく量を控えるように注意していますが、誘発中にアルコールを飲んでいると、卵の質が下がるのではないかと心配です。

 誘発中のアルコールは影響ありませんので、気にしなくて結構です。但し、過度な摂取は控えましょう。
(院長:田中温)
 40歳で、過去に複数回自然妊娠を経験し、1回子宮外妊娠、卵管を片方切除しました。薬を使って、タイミング法を試していますが、今まで自然妊娠できていたのにできません。もしかしたら、薬のせいで卵の質が低下しているのではと不安です。体外受精を薦められていますが、40歳以上でも自然妊娠する方を見聞きしますし、そこまでする必要があるのでしょうか?

 子宮外妊娠をして、一側の卵管を切除している場合には、反対側の卵管の癒着も十分に考えられます。もし、癒着してしまっていれば、自然妊娠は不可能になります。もし、あなたが、自然妊娠をご希望であるとすれば、ただちに腹腔鏡検査をし、残存している反対側の卵管の状況を正確に観察することが必要です。ひょっとすると、卵管が癒着して、自然および人工授精(AIH)では、妊娠できない状態になっているかもしれません。自然妊娠が希望であるならば、体外受精に入る前に、一度腹腔鏡検査を試してみるのをお勧めします。
 あなたのご指摘のように、誘発剤を長期間使用することにより、卵巣の希望が低下したり、卵の質が低下していく場合もあります。しかし、この傾向はごく稀な場合であり、十分な管理下の排卵誘発であれば、ご心配はいらないと思います。
(院長:田中温)
 高齢で体外受精(IVF)をしています。採卵後に、話をうかがうと、若い方でも採卵数が少なかったり、40歳以上の方でも、たくさん採れている方がいらっしゃいます。年齢別の平均的な採卵数というのは、どれくらいでしょうか?

 年齢別の採卵数は、排卵誘発法によっても違いますが、一般的なGNRHアナログ、スプレキュアを用いたロング法での採卵数であれば、20代で15個、30〜35で10個、35〜40歳では5,6個、40歳以上では、2,3個が平均的です。
(院長:田中温)
 受精卵を凍結してもらおうと思っています。解凍したら、卵がダメになってしまったという話を時々聞きます。どの分割状態での凍結が、解凍したときに一番ダメージが少ないでしょうか?また、凍結時の分割数で妊娠率に違いがあるのでしょうか?

 凍結の技術は、施設間または凍結する技術者の技能によって、大きく差がでます。一般的に、凍結は、緩慢凍結法とガラス化法の2種類があり、現在は、ガラス化凍結法が広く行われております。
 ガラス化法で凍結をしても、胚盤胞に進んだ状態では、蘇生率がかなり落ちてしまいます。ですから、もし、長期培養をして、胚盤胞をひとつ移植し、残った胚盤胞を凍結する場合は、なるべく、初期胚盤胞の状態で凍結する方が有利です。当院では、胚盤胞になる前の桑実胚で凍結することをお勧めしています。桑実胚で凍結をした場合の蘇生率は、胚盤胞よりも高くなります。
 ガラス化法に対し、緩慢凍結法という従来の方法(プログラムフリーザーを用いた方法)では、採卵2日目(4細胞から8細胞)で凍結すると、蘇生率はほぼ100%と非常に良好となります。しかし、この技術も、施設間、個人間においての差があり、凍結技術者の腕の差が問われるところとなります。
 当院では、採卵2日目の4-6細胞で凍結しています。胚盤胞移植を希望される場合には、4-6細胞で融解後、3日間培養しています。
(院長:田中温)
 できるだけ身体に優しくと思い、自然周期で体外受精(IVF)をしています。が、なかなか卵ができません。自然に卵ができなくても、刺激周期だと卵ができる可能性があるのでしょうか?

 自然周期で卵がまったくできないということは、早発閉経が考えられます。まず、ホルモン検査をして、視床下部、脳下垂体、卵巣のどこに異常があるかを正確に調べることが重要です。その結果によっては、刺激をしても、全く効果がないということも考えられます。
 自然周期で十分な数の卵ができないということならば、ぜひ刺激周期に変えてみてください。きっといい結果が出るはずです。
(院長:田中温)
 無事採卵を済ませ、受精も確認し、ほっとしていたのですが、卵の分割がいつもより遅いようです。6日目でようやく桑実胚になったと聞かされました。もう一日待ってみようといわれたのですが、7日目で胚盤胞になったとしても、着床する可能性はあるのでしょうか?

 6日目に桑実胚では、明らかに胚の発育スピードが落ちています。おそらく採取した卵子の質が不十分だったのではないかと考えられます。7日目に胚盤胞になったとしても、着床率は非常に下がると思います。凍結もあまり効果がありません。たとえ着床したとしても、流産率は非常に高くなります。長期培養しても、もともとの胚の質が低い場合には、分割のスピードが低下してり、フラグメンテーション(核の分裂を伴わず、細胞質が分裂すること)が増えていき、着床率は顕著に低下します。いかに質の高い卵子を採取するかが鍵となります。
(院長:田中温)
 ピルで乳がんの発症率が高くなると聞きました。カウフマンでピルを使っていますが、検査をしなくても大丈夫でしょうか?

 カウフマン療法やピルなどで使用するホルモン剤と乳癌との因果関係については、世界的に多くの調査がされておりますが、因果関係はないという結果があります。卵巣癌や子宮体癌に対しては、ピルを使用した方がリスクが下がり、予防効果があると言われています。体外受精で、1,2周期使うような量であれば、問題はありません。但し、長期間使用している方は定期検診をお受けになられてください。30歳代後半以上の方は、不妊治療にかかわらず、年1回は癌検診を行われてください。
(院長:田中温)
 胚盤胞で受精卵を戻しています。いつも、複数個戻すのですが、最近、胚盤胞を複数個戻したときに問題が起きたという記事を見かけました。どういうことでしょうか?

 胚盤胞移植の問題点は、一個の単一胚を戻した場合の、一卵性双胎の発生率が高くなるということです。一卵性双胎は、産科的にリスクが非常に高くなりますので、胚盤胞移植のひとつの問題点といえます。また、複数戻した場合には、二卵性の双胎となり、ごく初期に、血液間の間で、キメラ(1人の人間に2種類の遺伝子をもつ症状)となることが報告されています。ごく初期に胎盤内でふたつの胚が融合したためと考えられています。しかし、全体の頻度としては、非常に低いものです。このようなリスクを避けるがために、胚盤胞移植をするべきではないとは考えられていません。
(院長:田中温)
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