回答一覧 - タイミング治療と人工授精 No.1 -
 自宅の近医で、治療をしています。先月初めての人工授精を行いました(セロフェン服用)が、内膜が薄いということで、プレマリンという薬を処方されました。
 結局妊娠にはいたらなかったのですが、インターネットを見ていると、体外受精であればともかく、通常AIHでは内膜が薄くなってもプレマリンは処方されないという記述がありました。通っている医院は、不妊治療専門の病院ではないので、処方の仕方が間違っているのでは?と不安になって、専門の先生に聞きたくてお便りしました。いかがでしょうか?

 セロフェンの特徴の1つとして、内膜が薄くなることがありますが、決して全てのケースにあてはまるわけではありません。十分な内膜になる方が多くいらっしゃいますので、それ程気になさらなくて良いと思います。
 内膜の薄さをカバーするために、プレマリンという卵胞ホルモンのお薬を追加することもありますが、私達の経験ではあまり効果はないと思います。しかし決して間違った投与法ではありませんよ。クロミフェン(セロフェン)で内膜が厚くならない場合には、セキソビットというもう少しマイルドな排卵誘発剤もありますし、それでもあまり厚くならない場合には、HMGを少しずつうつ方法も効果があるかもしれません。まだ道はたくさんあります。少しずつトライしていってみましょうね。
(院長:田中温)
 私は42歳で不妊治療を始めて半年になります。結婚が遅かったため、歳が歳ですので一刻も早く赤ちゃんが欲しいと思い、結婚後すぐに近くの病院に通い始めました。
 最初は飲み薬(セロフェン)を飲みながらタイミング法を3回試して、4回目に先生から「プレマリンというホルモン剤がありますので飲んでみてください」と言われ、セロフェンを飲み始めて一週間後にプレマリンを飲み、その月に妊娠(後に切迫流産)しました。プレマリンは妊娠に効果があるのでしょうか?

 セロフェンは卵胞を形成することを刺激する排卵誘発剤ですが、その効果の他に抗エストロゲン作用があります。抗エストロゲン作用とは、頚管粘液量を抑えたり、子宮内膜を薄くしたりする作用です。これを拮抗させるためにエストロゲン製剤であるプレマリンを処方しているものと思われます。あなたの場合は、タイミング的にプレマリンが奏効し、妊娠に至ったものと思われます。プレマリンも飲む時期、量によっては頭の中の下垂体にフィードバックがかかり、卵胞形成、排卵が起きないこともありうるので、今回の場合はタイミングが良かったのでしょう。
(産婦人科医:永吉基)
 現在、31歳です。婦人科でタイミング法を1年以上行っています。毎月だいたい32日周期で、クロミッドを1日2錠5日間服用しています。卵胞はいつも18mmくらいになるのでHMGの注射はしないで、15から17日目に卵胞チェックをしてHCGを注射して排卵させています。
 タイミング法を始めて1年以上経ちますが妊娠しません。年齢のことも気になります。タイミングは何歳くらいまでと考えたほうがよいですか?他の治療法にかえた方がよいのでしょうか。

 1年以上タイミングを行っているのであれば、次のステップとして排卵誘発剤の注射でのタイミングかクロミッド内服の人工授精を考えられるのが良いかと思います。
 当院での遠隔治療の場合は一度当院を受診していただき、月経周期14日前後に近医の先生でモニター(卵胞の大きさ・内膜の厚さ・尿のLHチェック等)をしていただき、その結果をお電話もしくはメールにて連絡してもらって対応します。
 月経周期14日前後よりチェックをして、超音波での卵胞が20mm以上になったら、尿のLHの検査で強陽性となってから24時間後を目安にタイミングをとります。翌日に卵胞の消失を確認しますが、卵胞が消えていない時にはHCGを打って排卵を促し、翌日にもう一度タイミングをとっていただきます。このようなタイミングを5回前後行っても結果が出ない時には、腹腔内の癒着や卵管采の状態を確かめるために腹腔鏡をおすすめしています。
(産婦人科医:永吉基)
 3週間前に人工授精をしました。生理がまだこないので、妊娠したのではと思い、市販の妊娠検査薬を使用しましたところ、陽性反応が出ました。でも、1週間ほど前から生理痛のような下腹部痛があります。なにか異常があるのでしょうか?早急に検査を受けたほうがよいでしょうか?

 ご質問から考えて、現在妊娠5週程度と推察されます。1週間ほど前から生理痛のような下腹部痛があるとのことですが、出血をともなっていなければ今すぐ流産の危険性はなさそうです。人工授精を行なっていますので、恐らく、卵巣刺激による痛みか排卵時・人工授精時の卵巣・腹膜刺激によるものと思われますが、早急に診察を受けられてください。また、後1週間しても胎のうがみられず下腹部痛が増強するようでしたら子宮外妊娠も疑われますので、十分な検査をしていただくようにお勧めします。
(産婦人科医・麻酔科医:姫野憲雄)
 現在AIHを行っています。未排卵の卵が残っているまま次のAIHを行おうとしているのですが、着床率に影響は全くないのでしょうか?また残っている卵はどうなるのでしょうか?
 病院では問題ないと言われたのですが、気になったので質問させていただきました。是非詳しく教えて下さい。

 未破裂の卵胞なのか、それとも排卵後に生じた嚢腫なのかで大きな違いがあります。
 排卵後の嚢腫ならば様子観察でいいと思いますし、治療に入られても構いません。黄体化未破裂卵胞を繰り返す場合には、卵巣表面の癒着が考えられますので、腹腔鏡検査をお勧めします。
(院長:田中温)

 大きな未排卵(未破裂)卵胞でなければ、治療は続けて構わないかと思います。
 患者様によっては、残りやすい人もいます。続けて残るようであれば、休薬したり、休薬後も残っているようなら、経腟的に穿刺し、中の液をぬくことも可能です。
(産婦人科医:永吉基)
 人工授精5周期目の27歳です。毎回、生理14日目頃にエコーで卵の大きさを見ていただいています。
 いつも30〜40mmと、かなり大きくなっているのにもかかわらず、自力で排卵したことが過去1回しかありません。その他は全部排卵を助ける注射を前日に打ち、人工授精しました。
 排卵直前の卵の大きさは、通常20mmくらいと聞いたことがありますが、卵が大きすぎると不都合があるのでしょうか?また、自力で排卵できないことが、今までに妊娠できてないことと関係はあるのでしょうか?

 卵胞の大きさは、20〜30mmが理想と思われます(至適卵胞径)。ただし、個人差はあるもので、20mm未満で排卵する人、30mmを越さないと排卵しない人もいます。30〜40mmでもLHカラーやLチェック等の反応が出て、排卵していれば、問題ないかと思います。しかし、反応が出ていない場合やHCGをうっても排卵しない場合には、排卵障害が考えられ、HMGを使用しても同様であれば、体外受精を検討する必要があると思います。
(産婦人科医:永吉基)
 排卵検査薬にはまったく反応がありませんが、基礎体温は高温期に入っています。排卵しているのでしょうか?

 排卵検査薬(LHキット)を1日1回使用されている場合には、排卵をしていたとしても60%ぐらいしか検出できません。ですから、排卵検査薬がマイナスだったとしても、排卵していることは、十分考えられます。
 より正確に排卵したかどうかを知るためには、是非、1日に3回検査することをおすすめします。しかし、時間や経済的な問題があって、1日3回使用することは難しい場合が多いと思います。そのような場合であっても、1日2回は検査してください。80〜90%の精度で検出できます。
 また、尿の検査は、1回ずつを見るのではなく、1日分を一緒に並べて見ると色の変化が比較しやすくなります。一番濃くなった時間から24時間後が排卵と計算してください。
(院長:田中温)
 自宅にて人工授精ができるキットがあると聞きましたが本当でしょうか?わたしは、仕事の関係上、診療時間内に通院することが困難なので、成功率は低くても、そういったキットがあるのであれば試してみたいと思っています。どこで売られているのでしょうか?

 アメリカでは、そのようなキットを売っており、ご主人が注射器のようなものに精子を吸って、奥様の膣または頸管の中に注入するといったことが可能なようです。日本では、自宅での人工授精は認められておりませんし、そのようなキットは販売されていませんので、不可能です。
(院長:田中温)
 プライベートで恥ずかしいお話なのですが、人工授精の前日に、主人が泥酔してしまいました。こんなにも大量のお酒を飲むと、精子にも影響が出るのではないかと不安でたまりません。影響はないでしょうか?

 ご主人が泥酔されていても、ちゃんと射精できれば、妊娠可能です。精子に影響はありません。ただし、泥酔すると、性欲が減退し、射精が難しくなることが心配です。
(院長:田中温)
 半年前から治療を始めて、現在はタイミング療法を行っています。性交渉の後には、腰に枕を当てたほうが妊娠する確率があがるのでしょうか?精子がもれてしまってはと不安なのですが・・・

 射精後、精液のほとんどは、膣から外へもれでてきますが、これは、自然の現象で問題ありません。射精した精子のいくらかは、直ちに頚管を通って子宮内にはいり、卵管へと進んでいきます。ですから、タイミング後、腰に枕を当てたり、逆立ちをしたりする必要はなく、すぐに歩行されても全く問題はありません。
(院長:田中温)
 不妊治療中です。タイミングや人工授精後に夫婦生活をすると、せっかく着床しようとしている受精卵が、刺激で子宮から落っこちてしまうような気がします。普通の生活を・・と言われますが、治療後の夫婦生活は大丈夫なのでしょうか?刺激で着床を妨げることはないのでしょうか?

 タイミング療法や人工授精後に夫婦生活をしても問題はありません。着床率を妨げることはありません。
(院長:田中温)
 排卵後、数日おきにHCGの注射を指示されました。HCGは、排卵させるための注射だと思うのですが・・・。何のためでしょうか?

 HCGには、黄体ホルモンと卵胞ホルモンを高める作用があります。ですから、排卵後に黄体補充として使用すると有効的な場合があります。ただし、卵巣が腫れている場合には、エストロゲンを高める作用のために、さらに卵巣が腫れるということが引き起こされる懸念がありますので、このような場合には、HCGではなくプロゲステロンの投与がいいと思います。
 HCGは、排卵後の黄体補充としてだけでなく、貴方のおっしゃるように排卵させるためにも使用されます。これは、HCG内のLH作用を利用したものです。自然周期では、LHサージが起こって排卵するのですが、そのLHの代わりにHCGを投与しているわけです。現在では、排卵を起こすためにHCGではなくLHを使用することも可能となっています。
(院長:田中温)
 人工授精のときに、自宅から精子をもっていけると聞きました。主人は仕事の関係上、病院に行くことが難しいので、可能であれば自宅から持込をしたいのですが、どのようにして持っていけばよいでしょうか?

 原則的に、採精は施設内で行う方がいいと思います。それは、採取後、時間が経つに従い、精子の運動率が低下してしまうからです。どうしても、院外より運ぶ場合には、30分以内であればシャーレで結構です。来院までに30分以上かかる場合には、培養液の中に自宅でとった精液をいれて運んでください。この培養液の中であれば、半日程度経っても精子の運動率はあまり変わりません。
(院長:田中温)
 タイミング法を試しています。排卵日あたりを1日狙って夫婦生活をするようにしているのですが、なかなかうまくいきません。やはり、1日だけではなく、排卵日の前後、数日間試したほうがいいでしょうか?

 排卵日を正確に確認できるのであるならば、妊娠するためには、タイミングは1回で十分です。ただし、排卵のタイミングを正確に診断することが不可能な環境の場合は、予定排卵日の前後2日間、計5日間が妊娠のチャンスです。これは事実上、大変な苦労を伴いますので、排卵を正確に見つけられるように病院でモニタリングをすることをお勧めします。
(院長:田中温)
 クロミッドを服用しながら、タイミングをとっています。今回の周期では、卵胞が30mmになっていますが、排卵しません。知人に、大きくなりすぎた卵は質が悪いから、治療を中止した方がいいといわれました。このままタイミングをとっても大丈夫でしょうか?

 クロミッド服用後の卵胞は、自然周期の卵胞に比べ、1回り大きくなります。平均的に、直径が24-26mmで排卵しますが、場合によっては、直径が40mmになることもあります。ですから、直径が30mmで中止する必要はなく、治療を続けられて結構です。但し、直径が30mm以上になりますと、LUF(黄体化未破裂卵胞)となる頻度は高くなります。
(院長:田中温)
 結婚が遅く、40代後半になってしまいました。できるだけ、自然が希望で、不妊治療、特に高度医療はしたくありません。タイミングや漢方を試していますが、毎月、生理が来るたびに落ち込む毎日です。やはり、45歳以上では、自然妊娠は不可能なのでしょうか?

 自然妊娠を期待するよりも体外受精の方が妊娠率は少し高くなります。しかし、その成功率は3-5%と低く、かなり厳しいのが現状です。
(院長:田中温)
 タイミング法を何回もしていますが、なかなか妊娠できません。人工授精(AIH)にステップアップするべきかな・・とも思うのですが、AIHを繰り返すと、妊娠しにくくなるとも聞いて迷っています。どれくらいタイミング法を試してから、AIHに進むべきなのでしょうか?

 タイミング法と人工授精(AIH)法に共通して大事なポイントが3つあります。
 1番目は、正確に排卵時期を見つけることです。擬態的には、尿中のLHと経膣超音波で卵胞のモニターを正確に行い、そして、尿中LHキットで陽性を確認したあと24時間後に、タイミングまたはAIHを行うことです。
 2番目は、AIHをする際には、精子の処理を適切に正確に行うことです。
 3番目は、排卵をきちんと確認することです。基礎体温が高くなったからといって、排卵を確認したことにはなりません。基礎体温が高くなるということは、黄体ホルモンが出ているということを示しているだけにすぎないからです。黄体ホルモンが出ると排卵が起こると考えられる方が多くいらっしゃいますが、黄体化未破裂卵胞といって、黄体ホルモンが分泌された後でも排卵しないということがよくあります。ですから、タイミング、AIHを行った翌日には、必ず超音波で、卵胞が消失していること、ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)に腹水が貯留していること、内膜が厚くなっていることなどの確認が必要です。
 この3つをすべて満足した条件下でのタイミングを5,6回ずつしても妊娠しない場合には、人工授精(AIH)にステップアップするほうがいいと思います。また、AIHも5,6回が限度でしょう。AIHの場合は、上記の条件下で行った後にも妊娠しない場合には、クロミッドからHMGに変えるのもひとつの方法です。また、卵管の周囲の癒着を確認するために腹腔鏡検査もぜひお勧めします。
(院長:田中温)
 人工授精(AIH)をしています。指示された通りに通院し、内診もきちんと受けていました。なのに、排卵がわからなかったといわれました。病院に行っているのに、排卵を見逃されてしまうことなんて、あるのでしょうか?

 排卵のタイミングを見つけるためには、経膣超音波の卵胞計測と尿中のLH測定を行います。尿中LH検査は1日3回必要ですが、保険の関係上、1周期6回までしか保険がききませんので、何日も通うとなると高額となりますので、頻繁な検査は難しいかもしれません。しかし、特に自然周期の場合には、小さな卵胞で排卵する場合もありますのでで、尿中LHの測定を1日1回しか行わない方の場合には、排卵時期を逃す場合もあります。しかし、あなたの卵胞のクセがわかっていますので、次回は見逃すことはないと思います。
 クロミッド、排卵誘発剤を使った場合には、卵胞は約22-25mmの間で一定して排卵しますし、排卵時期も固定してきますので、この排卵時期を逃す率はぐっと下がります。ですから、排卵時期を見つけにくいような場合には、クロミッド、セロフェンなどを投与するほうがいいのではないでしょうか?
(院長:田中温)
 人工授精(AIH)を受けています。内診を受けましたが、すでに排卵しているといわれました。それなのに、人工授精を行うといわれ、そのまま人工授精をしました。すでに排卵しているのに人工授精をして、意味があるのでしょうか?

 排卵直後であるならば、妊娠の可能性は十分あります。ただし、12時間以上たった場合での人工授精(AIH)の妊娠率は低下します。その場合は、人工授精でなく、夫婦生活をもったほうが、経済的にもいいかもしれませんね。
(院長:田中温)
 市販の排卵検査薬を使用して、タイミングをとろうとがんばっていますが、反応がばらばらで、排卵日の判断がつきません。どうしたら、確実に排卵日を特定できるのでしょうか?

 排卵検査薬を使う場合には、できれば、1日3回の検査薬を一度に並べて比べてみてください。そうすることによって、3回の色調の変化が比較しやすくなります。キットで、もっとも強くなった陽性時より24時間後に排卵すると計算されてください。1回ずつ見ている場合、陽性が出た場合に、その陽性が弱い陽性なのか強い陽性なのかが比較できません。また、回数によっても正確さが変わってきますので、より確実に排卵日を見つけるためには、できれば1日3回の検査を行うとよいでしょう。
 また、基礎体温も参考となります。周期が規則正しければ、周期の日数より14を引いた数の1日前よりキットを開始して下さい。例えば、30日周期であれば、30-14=16、16-1=15となり、15日目よりスタートとなります。月経が不規則な場合は、病院にて超音波で実際に卵胞の発育をモニターされることをお勧めします。
(院長:田中温)
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